私の悪癖(見栄っ張り編)

私は多くの悪癖を持っているが、その中でも「見栄っ張り」の悪癖は凄まじいものがある。

 

もちろん少し見栄を張るくらいならみんな多かれ少なかれやると思う。

 

いい時計を買ったり、ちょっと背伸びしたブランド品を買ったりしたりするのは、消費者心理としてはある意味正常とも言える。

 

私の見栄はそういう普通のものではなくて、もっとこう、なんというか非常にイタい見栄の張り方なのだ。

 

私は大学受験で滑り止めで明治大学立教大学の心理学部を受けていた。初めての大学受験だったが、その時の私の心境は「受かるかどうか」ではなく「周りの受験生に変な目で見られていないかどうか、頭が良さそうと思われているかどうか」だった。

 

だから試験前に参考書を広げるような真似はせず、ディックの「ユービック」を読んでいた。

試験と全く関係ない本を読むことで楽勝アピールをして、周りを圧倒しようと思ってのことだった。ちょっと頭がおかしかったとしか思えない。

ちなみに私の隣りに座っていた女の子は(メチャクチャ可愛かった)キャリーバッグから20冊くらいの参考書を取り出し、机の上に積んでいた。試験15分前のことだった。これも私とは別の形での見栄の張り方だろう。ただ結果を確認したところ、その子は落ちていた。

 

本命の国立大学のときは流石に真剣に挑もうかと思いきや、私は試験に合格することより見栄を張る事を優先した。周りのみんなが最終確認をしている中、試験前と休み時間中に作ってきた弁当を食べていた。これで落ちたらあまりにもイタいが、ちゃんと受かっていたのでギリギリ見栄は張れた。

 

このイタい行動も10代で終わるかと思いきや、なんと就職試験のときもやってしまった。法務省の心理矯正官という試験を受けた時のことだった。

受験会場が東大で、当日は異様に暑かったことを覚えている。

狭い教室に大量の受験者がすし詰めになり、ひたすらに暑苦しかった。

周りのみんなはもちろん最後の追い込みをしていて、私もそうするつもりだったが、なんかみんなと同じようにするのが嫌という中学生みたいな理由で、私は昼休み中に外に出た。

そのまま東大の近くにあったパブに入って、カレーを食べてコロナビールを2杯飲んだ。ビールを飲んだのは完全に無意識のことで、受験中に飲むのは流石に不味いかと思ったが、頼んじゃったし仕方ないかと思って飲み干した。

午後は酔っ払ったまま論述試験に挑んだ。

その試験は無事合格し、次にさいたま新都心の合同庁舎で面接試験があったが、この時も面接ギリギリまで「鋼鉄都市」を読んでいた。

このように、私は「この人すごい」って思われたい欲求が強く、強いだけならまだしもそれが謎の行動に移ってしまっているのだ。

多分この悪癖のせいで私はいつの日か被害を受けることになるだろうと思っている。

ちなみにこの記事を書いたのも同じ悪癖によるものだ。